観光業が賑わっています。
観光資源が多く観光立国を目指す日本において、数少ない成長ビジネスの一つとして旅行業に多くの企業が参入しています。
その中でも、とくに「旅行代理店(トラベルエージェンシー)」の設立に興味を持たれている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この記事では、旅行代理店の設立にあたっての必読ポイントを簡潔にまとめています。
※旅行代理店とは、この記事においては、旅行業法に規定する旅行業者代理業㊟を行う者をいいます。
㊟旅行業者代理業とは、報酬を得て、旅行業者のために、旅行業者の行う一定の行為について、代理して契約を締結する行為を行う事業をいいます。
(1)法規制
旅行代理店を開業するためには、旅行業法に基づいて、「旅行業者代理業者*」として都道府県知事の登録を受けなければなりません。
個人事業者としてでもOKです。※法人格は求められていません。
(参考)登録手数料
15,000円から20,000円程度(都道府県によって異なる)
*旅行業者代理業者は、旅行業者の代理人といった役割を担う事業者です。旅行業者と業務委託契約を結び、旅行業者の代わりに旅行者との契約の締結に関する実務手続きを請け負うことで販売手数料を得る業態です。業務範囲は、所属旅行業者と締結した旅行業者代理業業務委託契約書の範囲内になります。
代理する旅行会社(所属する旅行業者)は1社のみに限られます(1社専属制)。また自社で企画旅行を実施することはできません。
(2)登録要件
・総合または国内の旅行業務取扱管理者を選任すること(有資格者がいること)
・旅行業者代理業業務委託契約の締結が済んでいること(所属旅行業者が決まっていること)
・法人の場合、事業目的に「旅行業者代理業」もしくは「旅行業法に基づく旅行業者代理業」が含まれていること
※国内旅行業務取扱管理者のみを選任している営業所においては、海外旅行業務の取り扱いはできませ
ん。最大の設立ハードルは旅行業務取扱管理者の資格者確保といえます。
(3)財産的制約
他の旅行業者(第1.2.3種、地域限定旅行業者)のように営業保証金や基準資産額は求められません。
そのため資金的な準備は不要です。
(4)その他の設立条件
上記以外は通常の個人起業や会社設立の場合と同じです。
会社設立の場合、株式会社、合同会社などの会社形態を選択します。
(5)注意点
・登録申請書類を提出する前に、都道府県へヒアリングを済ませておくこと。「登録申請」から「登録許可」まではおよそ30日~40日程度かかります。
・旅行業者代理業者の場合、登録の有効期間がないため、更新登録は不要。
・旅行業者代理業者の場合、報酬を得て、事業として旅行相談業務を行うことはできない。※無料なら可
(6)会計処理
販売手数料(代理手数料)が売上げとなります。
■参考リンク
なお、旅行代理店は、店舗兼事務所として営業所が1か所は必要になると思いますが、インターネットを活用した取引により日本全国に向けて営業活動ができます(サイト販売)。
旅行代理店の場合、自社企画旅行の販売ができないため収益力は劣るものの、他の関連事業(商品グッズ販売など)を兼業することで上手に経営することができるのではないでしょうか。
たとえば、スポーツグッズなどを販売しているお店が旅行業者代理業を登録し、他の旅行会社が企画したスポーツ観戦ツアーを販売することが可能になります。自ら旅行を企画することはできませんが、「本来の商品とあわせて旅行ツアーも売る」というような営業アプローチが可能になるのです。
旅行好きの方は検討価値があるかもしれません。
(税理士 橋本ひろあき)