投資会社を設立する場合、個人名義の上場株式を現物出資することがあります。
たとえば、平成28年4月1日に、上場A銘柄を現物出資して資本金500万円の会社を設立するとします。
(上場A銘柄)
保管状況:個人の特定口座
取得価額:200万円
時価:500万円
この場合、A銘柄を個人の特定口座から個人の一般口座へ一旦払い出しをして、そのうえで、法人の口座へ移管する必要があります。
税務上、個人は取得価額200万円の株式を時価500万円で会社へ売却したとみなされますから、売却益300万円について申告しなければなりません。
この場合、株式譲渡の税率は20.315%で、譲渡の税金は609,450円となります。
この個人・会社間取引は、一般口座内での取引となるため、当該譲渡所得を個別に計算して申告することになります。
さらに、設立法人への名義変更作業も必要となり、手間がかかります。
※株式名義管理人(信託銀行など)を介して株式名義変更が必要
もしも資本金500万円の会社を設立したければ、特定口座内の持株A銘柄を取引所(市場)で売却して、その売却代金を金銭出資する方法をおすすめいたします。(売却+金銭出資パターン)
このほうが、会社設立時の登記も簡単ですし、特定口座内の株式譲渡申告も証券会社が代行してくれます。
※金銭出資のほうが現物出資より登記手続きが簡単です。
ちなみに、譲渡の税負担はどちらでも変わりません。
(税金関係)
現物出資:609,450円→個人が確定申告して納税
売却+金銭出資:609,450円→証券会社が計算代行して天引き
税負担が変わらないため、手続きの簡単な金銭出資のほうをおすすめしているのです。
なお、上場株式の現物出資の場合、現物出資額が当該株式時価額以下であれば検査役の調査は不要とされます。
ちなみに、どうしても現物出資にこだわるのであれば、金銭出資+売買をすることで実質的に同様な効果にできます。
※この場合の税負担も上記と同額です。
(金銭出資+売買)
①金銭出資:(現金)500万円/(資本金)500万円
②売買:(有価証券‐A銘柄-)500万円/(現金)500万円
③①+②:(有価証券‐A銘柄-)500万円/(資本金)500万円
③は、まさしく現物出資と実質的には同じものです。
そして実務ではこちらの方法が採用されることがほとんどです。
(税理士 橋本ひろあき)