増資の実務

事業がある程度順調になってくると、対外的な理由や資金的な理由から増資を検討される経営者が多いと思います。

 

株式会社の資本金を増加させた場合、どういった手続が必要となり、また税金はどうなるのでしょうか?

 

ここでは、有償増資、中でも株主割当増資を前提に考えたいと思います。

 

(1)会計関係

会計上は、会社法の規制により、増資時の払込資本のうち1/2以上を資本金に計上しなければなりません。

 

例えば、増資時の払込みが1,000万円なら、株式会社では資本金は500万円以上(残りは資本準備金)にしなけれなりません。

 

(例示)

①仕訳:全額を資本金に計上

現預金1,000万円/資本金1,000万円

       

②仕訳:最低額を資本金に計上

現預金1,000万円/資本金500万円

          /資本準備金500万円

 

これは、設立時の払込みにおいても同様です。

 

(2)税務関係 

①法人住民税の均等割が増えることがあります。

なお、全額を資本金に計上しても、最低額を資本金に計上しても、どちらも「資本金等の額」は同額増加します。「資本金等の額」には、資本金のほか、資本準備金なども含まれるためです。

 

②資本金の増減事項について「異動事項に関する届出(異動届出書)」を、税務署や県税、市税にそれぞれ提出しなければなりません。

 

③有利発行(有利な価額)で増資が行われ、株主間で価値の移転があった場合には、贈与税の課税問題が生じます。

 

④設立して間もない(2期目まで)増資により、消費税の新設法人(当該事業年度開始日に資本金1,000万円以上の法人)に該当する場合には、消費税の納税義務者になりますので注意が必要です。

 

(3)税務上のデメリット(資本金が3,000万円を超える場合)

①資本金が1億円を超えると、法人税法上の大法人となり、法人税率が高率の23.9%となります。

②資本金が1億円を超えると、法人事業税で外形標準課税が適用されます。

③資本金が1億円を超えると、法人税法上の大法人となり、中小法人では利用できた特例が使えなくなります。

④資本金が3,000万円を超えると、特定中小企業者等からはずれ、中小企業者等の機械等を取得した場合の特別税額控除の適用ができなくなります。

 

このように税務上、1億円、3,000万円の壁があります。なお、これらは資本金そのもので判定されます。

 

(4)登記関係

①資本金変更の登記手続が必要となり、登録免許税がかかります。

※増資する資本金の1,000分の7(最低3万円)で、増加する資本金によって変わります。

 

②既存株式数と増資株式数との総数が発行可能株式総数を超えてしまう場合、発行可能株式総数変更の登記手続も必要となります。

 

(5)法務関係

募集株式の発行(一般に増資のこと)には、原則として株主総会の決議が必要となり、場合によっては取締役会の決議(又は取締役の決定)が必要となります。

 

(6)増資手続きの流れ(株式譲渡制限会社の場合)

①株主総会決議で募集株式発行を決定

②株主に増資(募集株式発行)の通知

③株主からの申込み及び出資金の払込み

④管轄の法務局にて資本金額・発行済株式総数の変更登記

  

(税理士 橋本ひろあき)