企業利益と一口でいっても、多様な意味で用いられています。
一般的には、営業利益や経常利益といった企業利益を意味することがほとんどです。
実は、日常見聞きするこうした利益は外部報告目的の制度会計上の利益であって、経営者にダイレクトに役立つものではありません。
外部報告目的とは、会社が債権者である金融機関や税金納付先の行政機関(税務署や県税、市役所など)、取引先や従業員などに経営状況を説明することを目的としたものです。
通常、会計専門家はこの外部報告目的の損益計算書作成のため、利益計算を行っています。
この損益計算書の主要構成要素は、売上高、売上原価、販売費及び一般管理費、営業外損益です。
(例示)
売上高 100
売上原価 △60
売上総利益 40
販管費 △25
営業利益 15
営業外損益△10
経常利益 5
(注)売上原価60の内訳:材料費(変)40、人件費(固)15、製造経費(固)5
ただし、制度会計上の利益は実際の経営結果を示す損益を提供することはできても、タイムリーな経営判断に資する会計情報の提供まではできません。
実は業績管理目的の利益は、変動損益計算書により把握できます。
この変動損益計算書の主要構成要素は、売上高、変動費、固定費です。利益概念として限界利益というものがありますが、これは売上から変動費を引いたものです(固定費が0であれば最大限残る利益のこと)。
売上高 100
変動費 △40
限界利益 60
固定費 △55
経常利益 5
どうして変動損益計算書の方が経営目的に合うかというと
例えば、売り上げが10%分の10増加すると経常利益が何%増加するのかという問いに、すぐに答えられるからです。
限界利益率60%分、つまり10%×60%=6%分の6増加するということが即座に計算可能なのです。
※ちなみに売上総利益率(いわゆる粗利益率)で計算すると40%分、つまり4増加と誤算してしまいますのでご注意ください。
もちろん、制度会計目的の損益計算書からも求めようと思えば求められますが、組み換え計算が必要となり面倒です。
変動損益計算書は、この他に、損益分岐点売上高などCVP分析にも活用できます。
(例示)
上記例の①損益分岐点売上高は、
固定費/限界利益率=55/0.6≒91.67→約92 と計算できます。
さらに②目標経常利益が売上高の10%の10とすると
(固定費+目標経常利益)/限界利益率=(55+10)/0.6≒108.33→約108 と計算できます。
このように、特に費用項目を原価、販管費項目のほかに、変動費、固定費項目にも分類することで、タイムリーな経営分析が可能になるのです。
(税理士 橋本ひろあき)