相続税を巡る問題で、「今ある財産を、相続までそのままにするのか、それとも生前に贈与するのか!?」というものがあります。
相続税は相続開始時にある財産について対象となるため、生前に贈与して財産を移転しておけばその移転した財産については相続税の対象とならないためです。
つまり、相続開始時になるべく財産を減らしておけばよいことになります。
だからといって、生前贈与をすれば、相続税の補完税といわれる「贈与税」が贈与を受ける者にかかることになります。
そのため、相続税対策を考える場合には、相続税の負担率(※1)と贈与税の負担率(※2)を比較して、
相続税の負担率≧贈与税の負担率
となる範囲内の贈与をすればよいことになります。
(※1)相続税の負担率
=相続税の総額/課税価格の合計額
(※2)贈与税の負担率
=贈与税額/(課税価格ー110万円)
しかし、贈与財産が不動産の場合、移転コストとして不動産取得税や登録免許税などがかかるため、別途考慮しなければなりません。
一般に、移転資産がアパートや駐車場などの収益物件の方が将来の相続税の負担軽減効果が高くなります。
移転後の不動産収入も同時に子らに移転できるからです。
また、移転資産をどの資産にすべきかは、財産状況によって変わってくるため(小規模宅地の特例の選択や物納の場合の選択などが関係するため)、信頼できる専門家と相談されるのが望ましいといえます。
なお、相続開始前3年以内の贈与や相続時精算課税制度を選択した贈与については、相続財産へ持ち戻されるため上記のような効果はないので注意が必要です。
(税理士 橋本ひろあき)