暦年贈与ではなく、相続時精算課税に係る贈与があった場合の相続税での取扱いはどうなるのでしょうか?
相続時精算課税に係る贈与は、生前に財産を贈与税無税(㊟最大2,500万円の特別控除額を活用した場合)で移転する場合に有効ですが、贈与者の相続時には相続財産として持ち戻されて、相続税の対象とされます。
ただし持ち戻される金額は、あくまでも贈与時の財産価額であるため、相続時に値上がっていても関係ありません。 そのため、相続時精算課税制度を適用する場合には、将来の値上がりが期待される財産を贈与するとよいでしょう。
(例示)
・平成27年5月5日:子に生前贈与(相続税精算課税を選択)
平成27年度相続税評価額2,500万円の土地を贈与
・平成30年6月6日:贈与者父に相続が発生
平成30年度相続税評価額3,500万円(土地)
→持ち戻される金額は、贈与時点の2,500万円となります。
また、累積贈与額が特別控除額2,500万円を超えた場合には、その超えた金額に対して、一律20%の税率で贈与税が課税されます。
(例示)
・平成27年5月5日:子に生前贈与(相続税精算課税を選択)
平成27年度相続税評価額2,500万円の土地を贈与
→2,500万円-2,500万円=0円
∴贈与税はかかりませんが、選択適用の贈与税申告は必要です(平成28年2月1日~3月15日まで)。
・平成28年7月7日:子に生前贈与(〃)
現金100万円を贈与
→(2,500万円+100万円)-2,500万円=100万円
∴100万円㊟×20%=20万円の贈与税を申告納付します(平成29年2月1日~3月15日まで)。
㊟相続時精算課税を選択した場合、暦年贈与の基礎控除額110万円を控除することはできません。
※(1)相続時精算課税に係る贈与
①相続時精算課税制度
贈与時に贈与財産に対する贈与税を納付し、贈与者が亡くなったときにその贈与財産の価額と相続や遺贈によって取得した財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納付した贈与税額相当額を控除した額をもって納付すべき相続税額とする制度(相続時に精算)のことです。
②相続時精算課税制度に係る贈与
①の贈与者から受ける贈与のことを特に「相続時精算課税制度に係る贈与」といいます。
③適用手続き
贈与により財産を取得した人が、この制度の適用を受けるためには、一定の要件の下、原則として贈与税の申告時に「相続時精算課税選択届出書」を税務署に提出しておく必要があります。
※この届出書を提出した人を「相続時精算課税適用者」といいます。
※(2)相続時精算課税分の贈与税額控除
①内容
相続時精算課税適用者に相続時精算課税適用財産について課せられた贈与税がある場合には、その人の相続税額(赤字の場合は0)からその贈与税額相当額を控除します。
②還付
上記控除の結果、なお控除しきれない金額があるときは、その金額の還付を受けることができますが、この税額の還付を受けるためには、相続税の申告書を提出しなければなりません。
◇平成27年4月10日更新
(税理士 橋本ひろあき)