法人の設立登記完了後に、いくつかの届出や申請が必要になります。
登記完了後になるのは、届出の際に必要書類となる登記事項証明書が発行されるようになるのが登記完了後になるためです。
できれば忘れることがないように、期限間際ではなく、すぐにでも届出すると安心です。
(1)税務上の届出
①法人設立届出書
設立日から2か月以内に税務署・県税事務所・市町村役場(税務課)に届出なければなりません。
添付書類としては、定款と登記事項証明書のコピーが必要となります。
※税務署への法人設立届については、登記事項証明書(履歴事項全部証明書)は原本が求められます。
②青色申告承認申請書
法人設立日から3か月を経過した日の前日までに税務署に申請の承認をしなければなりません。(設立事業年度の終了日が早い場合は、終了日の前日まで)
ちなみに、既存法人の申請期限は、承認を受けようとする事業年度の開始日の前日までとなります。
※青色申告を行うメリットとデメリット
(メリット)
・特別償却や特別税額控除が受けられます
・青色欠損金の繰越控除や繰戻還付が受けられます
・少額減価償却資産(30万円未満)の特例が受けられます
(デメリット)
・複式簿記による一定の帳簿書類を作成しなければなりません
・帳簿書類を7年間(場合により9年間)保存しなければなりません
③給与支払事務所等の開設届出書
役員報酬など給与の支給を開始する場合、開設後1カ月以内にこの開設届出書を税務署に提出します。
提出後、源泉所得税の納付書が税務署から送られてきます。
④源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
通常は「給与支払事務所等の開設届出書」と同時に提出します。
役員報酬など給与の支給や税理士報酬の支払を開始した場合、支払の際に一定の源泉所得税(特別復興所得税も含む)を徴収し、原則として徴収した日の翌月10日までに国に納付しなければなりません。
しかし、毎月の源泉納付は手間がかかるため、この申請を行って承認を受けることで、年2回にまとめて納付できる特例を受けることができます。
・1~6月の上期→7月10日まで
・7~12月の下期→翌年1月20日まで
なお、この特例は、給与支給人数が10人未満の場合に適用できます。
⑤法人税の届出
法定方法以外の減価償却資産の償却方法や棚卸資産の評価方法などを選択する場合には、設立事業年度の確定申告期限までに採用しようとする方法を税務署に届出なければなりません。
法定方法による場合は特に届出しなくても問題ありません。
⑥消費税の届出
・資本金が1,000万円以上の場合
税務署に提出する「法人設立届出書」の「消費税法上の新設法人」欄に所定の事項を記載します。
・資本金が1,000万円未満の場合
通常は2年間は免税事業者となるため、消費税に関する届出は不要です。
ただし、設立初年度に大規模な設備投資(調整対象固定資産を取得)を行うなどして、消費税の還付を受けたい場合は、消費税課税事業選択届出書を提出することになります。
なお、いったん当該届出をした場合、その後3年間は消費税の課税事業者でなければなりません。
つまり、売上金額にかかわらず消費税の申告が必要となってしまいます。
さらに、当該期間中は下記の簡易課税制度の選択ができませんから、課税事業者の選択にあたっては将来の有利不利を十分に検討して判断しなければなりません。
※簡易課税制度の選択
基準期間における課税売上高が5,000万円以下の会社は、売上高から消費税額を計算できる簡易な課税方式を選択できます。
この場合、あらかじめ消費税簡易課税制度選択届出書を提出する必要があります。
具体的には、事業を開始した事業年度の場合、その事業年度中に提出します。
2期目以降は、2期目が開始する前までに(1期目中)に当該届出書を提出する必要がありますので提出期限に注意が必要です。
(2)社会(労働)保険上の届出
①年金・健康保険(年金事務所へ)
・社保の新規適用届→会社設立後5日以内
・社保の被保険者資格取得届→入社後5日以内
・健康保険被扶養者届(国民年金第3号届)→被扶養配偶者がある場合は、「被保険者資格取得届」と同時に行います
②労働保険(1人でも労働者を雇用した場合)
・労災の保険関係成立届→雇用後10日以内(労働基準監督署へ)
・雇用保険の適用事業所設置届→雇用翌日後10日以内(ハローワークへ)
・従業員につき雇用保険被保険者資格取得届→雇用した日の翌月10日まで(ハローワークへ)
特に、必要な書類とその提出期限には注意してください。
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(税理士 橋本ひろあき)