以前のブログ記事でお伝えしたとおり、相続財産の評価額は法律上は「時価」ということになりますが、一体その時価はどうやって正確に把握するのでしょうか?
この問いに対する返答は本当に難しいものです。
不動産については、一物四価(公示地価、路線価、固定資産税評価、実勢価)ともいわれるくらいたくさんの価格が付いています。
このうちで、相続税評価のベースとなる路線価は実勢価の8割程度とされています。
つまり2割程度の割引(ディスカウント)がされているのですが、これは保守的に評価した方が課税上は納税者サイドに立っていて安全だということからです。
他にも、上場株式の時価は取引所で値段が付いていますので、原則としてその株価が時価となるのですが、こちらも保守的に評価ということで、3か月以内で月平均として一番低い株価で評価してもよいことになっています。
このように、時価が把握しずらい財産については、割引(ディスカウント)されるものが多いですから、財産評価に精通する税理士などは極限まで評価額を下げようと努力するものです。
実際の評価はかなり細かく専門的になりますので、一般の方が上手にするのは至難の業でしょう。
そのため現実に財産評価に困ったら、信頼できる専門家にお願いするのが、支払う報酬を考えても節税メリットの方が大きく得策といえます。
とは言っても、相続税の申告が必要かどうかは、できれば自分自身で判断できるのが望ましいです。
この際の財産評価の目安としては、
①不動産
・土地…実勢価の8割
・家屋…固定資産税評価額
・もし貸家などがあれば、さらに土地は2割引き、家屋は3割引き程度した金額とします。
②有価証券
・上場株…相続発生月の最安値
・非上場株…純資産価額に出資割合を乗じた金額
・国債などの債券…額面(ほぼ利息は無いに等しいため)
③預貯金
元本(ほぼ利息は無いに等しいため)
④みなし相続財産
・死亡保険金…受取保険金額-500万円×相続人の数(法律上は法定相続人の数と規定)
・死亡退職金…受取退職金額-500万円×相続人の数
④その他
おおざっぱに処分価値で評価、たとえば生命保険の権利は解約返戻金額で評価します。
要はいくら現金価値としてあるのか?という視点で評価します。
以上の合計額から債務・葬式費用を引いたところで、課税ラインである遺産に係る基礎控除額と比較して、相続税の申告が必要かどうかを大雑把ですが判断できます。
明らかに基礎控除額以下ということであれば問題なく申告不要となりますが、もし微妙な感じなら、やはり専門家に簡易診断してもらったほうがよいでしょう。
税務署は相続の事実と財産の状況はあらかた把握しているでしょうから、無申告でいると余計な税金がかかることになります。
具体的なぺナルティとしては、
無申告加算税が本税の15%~20%、
延滞税が年4.2%~
課されてしまいます。
さらに悪いことに申告していれば使えた各種の特例が使えなくなります。
こちらは大損害となる可能性もあります。
申告が必要であればきちんと対処するのが賢明といえます。
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(税理士 橋本ひろあき)