今回は、匿名組合に関する基本的な法律関係をみていきましょう。
(1)匿名組合契約の成立
匿名組合契約に登記や登録は不要です。
また、匿名組合契約は営業者と個々の組合員との間の個別の契約であり、匿名組合員相互間の契約関係はありません。
なお、匿名組合出資は金銭出資と特定物出資の財産出資だけが認められます。
(2)匿名組合の業務執行
匿名組合の業務執行は営業者のみが行い、営業者は匿名組合を代表します。
匿名組合員は第三者に対し、権利義務を有しません。
(3)組合財産の帰属
匿名組合財産は営業者に帰属します。営業者は匿名組合財産の他、固有財産を有しますが、匿名組合財産と固有財産とが法的に分別されることはありません。そのため営業者固有の事由による倒産は匿名組合財産にも及びます。
なお、匿名組合員は財産の分配(利益の配当)と出資の返還以外には、匿名組合財産に対する何らの権利も有しません。
(4)損益分配と財産分配
組合員各当事者への損益分配の割合及び方法は、各匿名組合契約に基づきます。
また、損益分配の割合を契約に定めなかったときは、その割合は各組合員の出資の価額に応じます。
また、匿名組合の損益は組合に帰属するのではなく、営業者と匿名組合員に直接的に帰属します。
一方、財産分配(利益の配当)とは具体的な財産を組合員に対し帰属させる手続きのことで、出資が損失によって減少したときは、その損失を填補した後でなければ、財産分配は請求できません。そのため、財産分配は利益剰余金の範囲内でのみ可能となります。
(5)匿名組合員の責任
匿名組合員は、出資の範囲内でのみ責任を負います。(有限責任)
(6)注意点
匿名組合員が営業者に対して有する利益分配請求権や出資返還請求権は通常の債権で、営業者が倒産、破産したときに他の債権者に優先して弁済を受けることはできません。(一般債権者と同等扱い)
そのため、営業者固有の事業の影響で出資金が減ったり無くなったりすることもあり得ます。
このような理由から、営業者には個人や既にある法人がならずに、他の事業を一切行わない合同会社等を設立して営業者とする(倒産隔離する)ことが一般的です。
(税理士 橋本ひろあき)
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