家族役員が複数いる場合、思わぬ利益が発生した(する)事業年度において役員の1人が退任することで法人所得を減らすことが可能です。
法人費用に計上できる役員退職金は通常次のように計算されます。
支給限度額=役員最終報酬月額×役員在職年数×功績倍率
①役員最終報酬月額
できるだけ役員在任期間の最後の期間の役員報酬を増やすとよいでしょう。
しかし、最低でも1年以上は、その最終報酬月額での継続支給が必要と考えます。
強引な報酬つり上げは調査対象となります。
②役員在職年数
単純に役員として形式的(登記上)に就任していた期間です。
常勤か非常勤か、役員報酬が有報酬か無報酬かは関係ありません。
③功績倍率
役職や貢献度に応じて変わります。
代表社員の場合は、上限目安として3.0~3.5倍、
(非業務執行の役員の場合は通常1.0倍ですが、合同会社ではありえません。)
業務執行社員の場合は、これらの範囲内の倍率になります。
※合同会社の場合
例えば、
①役員最終報酬月額:50万円
②役員在職年数:20年
③代表として功績倍率:3.0倍
とすると、
支給限度額=50万円×20年×3.0=3,000万円
と計算されます。
一方、退職金を受け取る役員の方は退職所得となります。
退職所得の計算式は、
退職所得=(退職金ー退職所得金額)×1/2(※)
※在職5年以内での退職の場合は、1/2軽減なし。
上記の例で計算すると、
(3,000万円ー800万円)×1/2=1,100万円・・・申告分離課税
所得税:1,100万円×33%-1,536,000円=2,094,000円
住民税:1,100万円×10%=1,100,000円
総額=3,194,000円
税負担割合=3,194,000円/30,000,000円≒10.65%
となります。
実際は、会社の財務状況や個人の考え方で適正な退職金額は決まってきます。
税負担のルールは上記のとおりですから、理想的な退職金支給額を検討する際の参考にしてください。
なお、退職金の原資については、利益の内部留保、役員生命保険や倒産防止共済の解約返戻金などが活用できます。
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「投資会社の節税法④(役員退職金の支給)」←当記事
(税理士 橋本ひろあき)