個人投資家として投資活動を行う場合、ほとんどの方は証券会社の「特定口座」を利用することになると思います。
特定口座を利用すると、面倒な譲渡所得計算を証券会社が代行してくれるためです。
ここでは、個人口座の特徴を法人口座と対比させてみてみたいと思います。
法人口座と個人口座の違いの一つとして、株式の譲渡所得計算があります。
個人の株式の譲渡所得は次のように計算できます。
株式譲渡所得=総収入金額ー(取得費+譲渡費用+負債の利子)
また、税率は上場株式とすると、H26年1月以降は20.315%(ただし、NISA口座内のものは非課税)となります。
ここでは、取得費(@譲渡単価×譲渡株数)の@譲渡単価の部分に限定して説明いたします。
@譲渡単価ですが、
・法人口座では、移動平均法(法定算出方法)か総平均法かの選択
・個人口座では、総平均法に準ずる方法
によって、1株当たりの取得価額を算出することになっています。
(計算例)取引状況<単位:円>
①H26年5月 買 @799 1,000株
②H26年7月 買 @600 1,000株
③H26年11月 売 @900 1,000株
④H27年1月 買 @499 1,000株
⑤H27年3月 売 @699 1,000株
(1)法人口座(移動平均法(法定算出方法)による)
・①の時点 処理なし
・②の時点で単価修正
{@799×1,000+@600×1,000}÷2,000=@699.5
・③の時点の譲渡損益
⇒@900×1,000-@699.5×1,000=200,500
・④の時点の単価修正
{@699.5×1,000+@499×1,000}÷2,000=@599.25
・⑤の時点の譲渡損益
⇒@699×1,000-@599.25×1,000=99,750
(2)個人口座(総平均法に準する方法による)
・①の時点 処理なし
・②の時点 処理なし
・③の時点の譲渡損益
⇒@900×1,000-@700※×1,000=200,000
※{@799×1,000+@600×1,000}÷2,000=@699.5→@700(1円未満切上げ)
・④の時点 処理なし
・⑤の時点の譲渡損益
⇒@699×1,000-@600※×1,000=99,000
※{@700×1,000+@499×1,000}÷2,000=@599.5→@600(1円未満切上げ)
このように、移動平均法は、取得時に単価修正をし、総平均法に準ずる方法は譲渡時に単価修正するという時点の違いがあります。
さらに、総平均法に準ずる方法は、単価計算で1円未満の端数を切り上げることになりますが、移動平均法は一切端数処理はしません。
なお結論としては、個人口座の方が譲渡所得計算上は有利となります。
(税理士 橋本ひろあき)