投資会社の設立シミュレーション①(税負担比較)

投資会社の設立のヒントで、投資資金1,000万円以上あれば投資会社の設立(法人投資家として活動すること)をおすすめしますと記事に書きましたが、ここでは数字的に検証したいと思います。

 

(前提)

①合同会社形態で会社設立⇒設立コスト約7万円

②上場株式へ全額投資⇒配当リターン約30~40万円(配当利回り3~4%)

③上場株式のキャピタルゲイン(値上がり益)⇒約100万円(10%値上がりと仮定)

④上場株式の株主優待メリット⇒約10万円(優待利回り1%)

⑤役員報酬月額10万円

⑥社会保険に加入したとして月額で約1.4万円(会社負担額)

⑦初事業年度は平成26年4月2日~平成27年3月31日

 

(シミュレーション)

<法人側:投資会社>

(1)益金の額

   ②+③+④=150万程度(※)

   (※)受配の益金不算入は考慮外。

(2)損金の額

   ①+⑤×12+⑥×12=143.8万円

   実際は、諸費用が7万円程度はかかるため、150万円程度

(3)所得金額

   (1)-(2)=0

(4)納税額

   法人住民税の均等割額11か月分で約6万5千円(山口県の場合)

 

<個人側:役員>

(1)給与収入

   ⑤×12=120万円

(2)給与所得

   120-65(給与所得控除)=55万円

(3)所得控除額

   社会保険料控除(約1.4×12=16.8万円)+基礎控除額38万円=54.8万円

   ※生保控除、扶養控除等は考慮外

(4)所得金額

   (2)-(3)=0(千円未満切り捨て)

(5)所得税額

   0

(6)個人住民税額

   均等割額5,500円(山口県の場合)

 

<合算(法人+個人)>

(1)収入の額

   120万円(役員報酬)+10万円(株主優待メリット)=130万円

(2)支出の額

   約7万円(会社設立コスト)+約7万円(諸経費)+社会保険料総額(約2.8×12=33.6万

   円)+約6.5万円(法人タックス)+5,500円(個人タックス)=約55万円

(3)収支の額

   (1)-(2)=75万円・・・(a)

 

※単純に個人投資家として投資活動を行っていた場合の収支の額は

(1)配当・譲渡益

   約40万円+約100万円=約140万円

(2)(1)に係る税金(配当につき申告分離課税を選択するとして税率20.315%を適用)

   約140万円×20.315%=約28万円(※)

   (※)総合課税の場合の個人の配当(税額)控除は考慮外

(3)純益

   (1)-(2)=112万円 +10万円(優待メリット)=122万円

(4)社会保険負担

   国民年金保険料(約1.5「仮」×12=約18万円)

  +国民健康保険料(約1万円「仮」×12=約12万円)

  =約30万円

(5)正味収支の額

  (3)-(4)=約92万円・・・(b)

 

このように、(a)と(b)を比べると(b)の方が有利なのが分かります。

つまり個人投資活動の方が税金上では有利ということです。

 

しかし、初年度は会社設立コストと法人での諸費用を計上しておりますので、通常年度では両者同じくらいのいわゆる手取り額になると思います。

(また、個人投資家としての社会保険負担額は、実際は個人の他の所得状況により大きく変わります。)

 

つまり投資額1,000万円が分岐点ということです。

これ以上になれば、法人の実効税率が年所得800万円以下までは、ほぼ個人の証券税率と同水準となりますので大きく不利になることはありません。

 

なお、実際のキャピタルゲインは予想不可能であり、想定値を大きく上回るケースや逆に下回ってしまうケースもあり、上記シミュレーションは単純な前提をベースとしたものであることをお断りしておきます。

 

また、投資法人では投資活動のほか、一般の事業活動をあわせて行えるというメリットがあり、株主優待も個人名義とは別に法人名義で享受でき(つまり個人と法人でダブルで享受可能)、社会保険の加入状況によっては、個人でする以上のメリットがあり得ることもお伝えしたいと思います。

 

■関連記事

投資法人の設立と運営のヒント

投資会社の設立シミュレーション①(税負担比較)」←当記事

投資会社の設立シミュレーション②(相続税対策)

投資会社の設立シミュレーション③(欠損金利用)」 

投資会社の設立シミュレーション④(役員退職金)

投資会社の設立シミュレーション⑤(損益通算目的)

 

◇改訂履歴

2014年6月19日:最終更新日

2013年11月14日:初稿日

 

(税理士 橋本ひろあき)