自己株式の無償取得と消却の税務

株式会社が資本政策を機動的に行うため、会社経営者(通常株主でもあります。)から自社株を取得することがあります。

 

≫もし会社が自己株式を個人株主(社長や会長など)から無償取得した場合、課税関係はどうなるのでしょか?

 

(1)取得側

会社側に課税関係は発生しません。

 

平成18年度の税制改正前までは、

(有価証券)××(受増益)××

というように課税されていましたが、

この年度の税制改正で「自己株式」が有価証券の範囲から外れ、

当該取引が資本等取引とされたためです。

 

※この場合、会社は自己株式の数の増加の処理と財務諸表への注記が必要です。

 

(2)譲渡側

①無償譲渡した株主(社長や会長など)

 みなし譲渡として「時価」による株式譲渡の課税対象となります。

 この場合の時価は、所得税基本通達の「一株当たりの純資産価額等を考慮して通常取引されると認められる価額」により算定します。

 ※相続・贈与税の財産評価基本通達の時価とは異なりますので注意してください。

 

②他の株主(息子や親族など)

 株主間の経済的利益の供与が生ずる場合は、贈与税の課税対象となります。

 

このように思わぬところで課税関係が発生してしまうので、無償ではなく、できれば適正な株価で自社株を譲渡(会社側は有償取得)するのが望ましいと考えます。

 

≫≫次に、自己株式を消却した場合はどうなるでしょうか?

  自己株式の消却は発行済株式総数が減少するため、1株当たりの利益が増えることになりますので、上場会社であれば株価上昇が期待できます。

 

会計処理としては、

(その他資本剰余金)××(自己株式)××

となります。

この場合の金額××は、消却する自己株式の帳簿価額となります。

 

また、税務上の処理は特に不要です。

※自己株式の取得時に課税関係が完了済のためです。

 

なお、決算時にその他資本剰余金勘定がマイナスなら、繰越利益剰余金勘定と相殺仕訳します。

また、発行済株式総数から消却した自己株式数を差し引くことになります。

 

≫≫≫最後に、「株式譲渡契約書」に関してです。

 自己株式を会社と株主とで相対で譲渡するときに作成する「株式譲渡契約書」には(注)基本的に印紙税はかかりません。

 

※(注)基本的としているのは、契約書の文言により、例えば「この契約により、譲渡代金を受け取りました。」という文章があれば、「売上代金以外の金銭又は有価証券の受取書」という課税文書に該当するので、株主が事業者であれば200円の印紙税がかかってしまいます。この文言を記載しなければ不課税で問題ありません。

 なお、「譲渡代金として××円支払うものとする。」という文章は「受け取り」に該当しないので印紙税はかかりません。

 

(税理士 橋本ひろあき)